世界中の人が暮らすオランダ あなたはなぜここに?
「I AM NOT A TOURIST」母国を離れて暮らす人たち
オランダでは「EXPAT」という言葉をあちこちで見かけます。イクスパットとは、海外で暮らす人、という意味です。日本語で言うところの「移民」ほど大げさではなく、企業の海外駐在者や、一時的な海外生活者も含めているようです。オランダを歩いていると、世界中のほとんど全ての人種が集まっているように見えます。「人種のるつぼ」という言葉は日本ではあまりピンと来ませんが、アムステルダムの街角に立つと、これがまさに「人種のるつぼ」だと理解できます。これまでに私が訪れたことのある場所、例えばパリやベルリンのような大都会と比べてみても、オランダのアムステルダムやデンハーグの方が、より多くの人種が集まっているように見えます。
そのアムステルダムで、きのう、イクスパット向けのイベントが開かれました。イベントサイトや会場での配布資料によれば、オランダの大手銀行やLCCの航空会社、日本の村田製作所などがスポンサーとなっていて、オランダでの仕事探しや新生活に役立つサービス情報などを集めることができるというもので、去年は4000人以上が訪れたということです。開催当初は7人のプレゼンによる小さなイベントだったものが、13回目となる今年は40人以上の講師によるプレゼンに加えて、多数の展示ブースが並ぶなど、イベントの規模は年々拡大しているとのことです。イベントサイトで事前に登録すれば入場も無料です。
「あなたはなぜオランダに来ましたか?」
「I AM NOT A TOURISUT」のイベントタイトル通り、イクスパットの卵である私は、当初、自身の新生活準備のために会場を訪れようと考えていました。しかし、前日の夜になって考えが変わりました。あらゆる人種が集まっているオランダでの外国人居住者向けイベントなら、世界中の人に会えると思います。彼らに問いかけてみようと思ったのです。質問はシンプルに「あなたはなぜオランダに来ましたか?」と。イベント当日、昼前にホテルを出た私は、デンハーグの図書館で入場無料のeチケットをプリントアウトしてもらい、日本で言えばイオンや西友に近い日用雑貨店のHEMAで、油性マーカーとスケッチブックを買い込んで、アムステルダムの会場に向かいました。
13時30分すぎに入場しましたが、結構な人出でした。オランダの公用語はオランダ語なので、通常の案内表示や看板はオランダ語表記ですが、外国人居住者向けのイベントだけに、ここではほとんどの表示が英語で記されています。来場者の顔ぶれを見渡してみると、やはり、世界中からあらゆる人種が集まっていることがわかります。私は、さっそく油性マーカーとスケッチブックを手にもって、来場者に声をかけ始めました。世界各国からオランダに来て生活している人たちに聞いた「オランダを選んだ理由」、一言で答えてもらいました。
イクスパット20人の回答から感じたこと
およそ2時間半で、18組20人のイクスパットのみなさんにお答えいただきました。ここに全員の回答を掲載しています。わずか20人の回答では、データとして結論めいたことは言えません。ただ、いくつかの傾向を感じ取ることができました。EU圏内出身の方やグローバル企業に勤めている方は当然のことながら「仕事でオランダに来ています」と答える人が多いのですが、同時に、オランダは住みやすいね、と添える人も多かったです。カナダやイギリスからも自身の生き方を見つめてオランダに来たという回答があったのは、少し意外でした。また、東アジアからは中国人にしか出会えませんでしたが、自由を求めてオランダに来たと答える人がとても多く、中国の国情を表しているのかもしれないと複雑な思いを持ちました。
取材を受けてくれた方へ
私が声をかけた人たちの中には「私はイクスパットでなくオランダ人だから、残念ながら対象にならないね」と話してくれた方が2人と、ちょうど帰るところだったのか、手の合図で「ごめんね」と断られた男性が1人いましたが、「私もイクスパットの卵で日本から来たばかりだ」と自己紹介すると、ほとんどの方が快く応じてくれました。また記事を掲載する私のウェブサイトに興味を持ってくれる方も多く「記事は日本語で書くので申し訳ないけど読めないよ」というと「大丈夫、Google翻訳で読める」と言ってくれた方もいて、時代は進んだなとあらためて感じました。そして、私のおぼつかない英語でも取材はできるということもあらためて確認でき、勇気をもらいました。ご協力してくれたみなさんに感謝申し上げます。どうもありがとうございました。