オランダ移住視察で見た「自転車大国」

自転車大国

「自転車大国」と聞いていたオランダ。

例えば、歩道とは区別された自転車レーンは、以前訪れたベルリンでも見ましたし、何をもって自転車大国といわれるのか興味がありました。いずれにしても、日常生活の足として自転車は必要不可欠ですし、街の地理を把握するにも、雰囲気を感じるにも、自転車に乗っている方が飲み込みも早いと思い、到着してすぐに自転車を借りました。

お世話になった長期滞在型のホテルでは、2週間以上の滞在者に無料で自転車が貸し出される仕組みでした。自転車はそれぞれしっかりナンバリングされていて、決められた保管場所があり、駐輪場にはタイヤの空気入れやライトの充電器などがきちんと整備されています。想像していた以上に、自転車が大事に扱われている印象でした。またがってみると、日本の自転車にはない骨太な印象です。頑丈というよりも頑固という雰囲気です。

街中へ出てみると、私が乗っているような「ホテル所属でナンバリングされている自転車」が無数に走っていました。日替わりでなく、一定期間だけでも自分の自転車としてタイヤに空気を入れながら乗る、これは、なかなかいい乗り方です。自転車への愛着が大いに湧いてきます。ちなみに、妻は最初に割り当てられた自転車が大きすぎて何度も転倒したため、次の日には小さな自転車に交換してもらいました。

<こちらは街中で見かけた子ども用自転車>

恐怖の自転車レーン

実際に、街へ出てみると、自転車レーンの存在感がとても大きいことに驚きました。しかし、運転は日本より難しいかもしれません。歩行者を気にすることなく運転できる反面、専用レーンは広くありません。幅は1.5メートルあるかないか、並走できるのはせいぜい2台です。原則的には自動車の流れと同じ一方通行のようですから対向車もありませんが、驚いたことにバイクが同じレーンを走っています。しかも、結構なスピードです。

前後の自転車の存在にも気をつけなければなりません。まず、自転車は総じてこぐのが早いです。のんびりサイクリングの気分で走っているとどんどん抜かされていきます。さらに、並走してしゃべりながら自転車をこいでいようものなら猛々しいベルの音を聞かされることになります。

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<アムステルダムの駐輪状況>

街の主役は自転車

アムステルダム中心部の交差点などでは、信号待ちの自転車があふれ、ふとアジアかと思うような光景もたびたび目にしました。また、主要駅には必ず巨大な自転車ターミナルが隣接していて、朝晩ともなれば通勤通学の市民が出入りしています。まるで巨大な蜂の巣のような光景です。

街中の歩道にはだいたい自転車のスタンドが並べられていて、そのほとんどのスペースに自転車がとめられています。放置されている印象はありませんが、街中に自転車が並んでいる印象で、これはベルリンの比ではありませんでした。自転車に乗る人の数や歩道の駐輪状況からすると、ベトナムのホーチミンに似ているかもしれません。

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<ビールが燃料?これも自転車の一種>

骨太な自転車たち

自転車の種類の豊富さでいっても、オランダはまさに「自転車大国」です。

まず、一般的な自転車の形ですが、日本人からすれば昔の郵便配達や新聞配達で使われていたような頑丈なタイプの自転車が多く、色はだいたい黒です。街中の自転車店では、このタイプの中古自転車は200ユーロくらいからありました。

若い女性が乗っている場合でも、後輪の両側にバッグが取り付けられていて、日本人の感覚からするとスタイルがいい感じではありません。あくまで機能重視、耐久性重視といった感じです。ほかの自転車にも当てはまることですが、とにかくフレームが太いです。日本ではあまり見たことのない太さのフレームです。このほか、子どもを前後に乗せられる3人乗り自転車はごく当たり前に見かけます。同じような形で大きな荷室を持つ自転車も見かけます。ロードバイクやスタイリッシュな自転車は全くないわけではありませんが、そうですね、割合としては1割に満たないと思いました。

 

自転車から眺める風景

滞在中、アムステルダムでは自転車での移動が中心でしたが、その中では日本で見かけないルールやマナーもたくさんありました。私が昔、小学校で習った手信号は、アムステルダムでごく普通に使われていました。自転車用の信号機の見方やトラムの線路の渡り方などは、よくわからないうちに滞在期間が終わってしまいました。まだまだ危ないなと思いつつも自転車がやめられなかったのは、流れゆく街の風景がとても美しかったからです。自転車大国オランダ、またあらためて現地からリポートします。